皮膚の基礎知識 3

4. 角質層の働き

1㎜にも満たない角質層があることで、細菌や病原菌、有害物質の体への侵入を防いでいます。
また、角質層の構造が、体内の水分、体液を漏れ出さないようにしています。
角質層を拡大すると、角質細胞が幾重にも重なって層を構成し、水の分子はもちろん病原菌も通さないほど密になっています。
角質層は、基底層のケラチノサイトが角化することで角質細胞になります。この角質細胞は、そのほとんどが体で最も硬いケラチンタンパク質で出来ていて、この丈夫な角質細胞があることで体の内部は守られています。
丈夫な角質細胞も徐々に機能を果たせなくなってきますが、角化によって古い角質は剥がれ落ち、新しい角質細胞と入れ替わることで、その機能を維持しています。

4-1. 角質層と水分

硬いケラチンタンパク質で出来ている角質細胞ですが、体を動かすとき同時に肌も柔軟に動かなければいけません。
そのため角質層は、ある程度の柔軟性も必要とします。
人の肌を触ると堅さよりも柔らかさを感じまが、これは角質層に20%~30%ほど水分が含まれているからです。
水分を失った角質は硬くなります。そのため角質層に適度な水分が無くなると肌はカサカサになります。
外部からの水分の侵入を防ぐ角質層ですが、体内部の水分は放出しなければいけません。なぜなら人の体は熱を発生します。体温を一定に保つためには、余分な熱を発散しなければいけません。その仕組みとして、水分が蒸発するときに熱を吸収する性質を利用し、水分を体外に放出しています。
そのため角質層は、適度の水分は保持しつつ、ある程度の水分を透す機能を持っています。

4-2. NMF(天然保湿因子)

水分を失った角質は硬くなりカサカサになります。しかし、硬くなった角質に水分を与えると、ふやけてふくらみ柔らかくなります。また水分が無くなると再びカサカサになります。
そのためにも角質層は水分を保持する必要があります。
この水分を保持するための成分が「NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)」です。

*NMF(天然保湿因子)の成分
成分 NMFに占める割合(%)
アミノ酸 40.0%
PCA(ピロリドンカルボン酸) 12.0%
乳酸塩 12.0%
尿素 7.0%
NH3、尿酸、グルコミサン、クレアチン 1.5%
クエン酸 0.5%
Na+ 5.0%
K+ 4.0%
Ca2+ 6.0%
Mg2+、PO2-、Cl-、糖、有機酸、ペプチド、その他 8.5%

「NMF」は表のように、ほとんどがアミノ酸ですが有機酸等その他の成分で組成されています。
これらの成分はケラチノサイトが角化する過程で細胞の中に作り出しますが、主に顆粒細胞のケラトヒアリン顆粒に含まれるタンパク質が分解したもので、汗に含まれる成分に由来するものも含んでいます。
「NMF」の素になるタンパク質に、ヒスチジンリッチタンパク質があります。このタンパク質は、角化の過程で顆粒細胞が角質細胞になるときに一部が分解され、ケラチン線維間タンパク質になります。これが角質細胞になると更に分解されて「NMF」の成分になることが解っています。
角化のサイクルが狂ってくると「NMF」の主要成分が作れずに、角質層の「NMF」が不足してきます。すると角質層は、硬くもろくなりカサカサになります。これは「NMF」による水分の保持が十分でなくなったことでおこります。
NMFの成分は、それ自体が水溶性で親水性が高く、多くの水分を保持することが出来ます。
水分を保持することがNMFの主な働きですが、柔軟性と弾力性のある角質の性質を保っているのはこれだけではありません。
角質細胞内にあるケラチンタンパク質は、棒状のケラチン線維で構成されています。このケラチン線維の両端には、可変領域と呼ばれる部分がありまが、NMFの成分の中には、この可変領域と相互作用する成分があります。
このNMFの成分が無いとケラチン分子が自由に動くことが出来なくなり、水との親和性が低下します。その結果角質層のしなやかさと弾力性も低下してしまいます。
NMFは、水分を角質層に供給していますが、その役割はそれだけに留まらずに、角質層の性質も左右するほど重要な成分といえます。

4-3. 細胞間脂質

細胞間脂質の液晶構造

細胞間脂質は、角質層の角質細胞と角質細胞の間で水分を保持していますが、その構造は右の図のように、細胞間脂質の下に水の層があり、その下に細胞間脂質の層があり、更にその下に水の層があってと、層状になっています。このように脂質の層と水の層が繰り返し層状に並んでいる状態を液晶構造といいます。
この液晶構造によって細胞間脂質が水分を逃がさずに保持しています。
細胞間脂質は、ケラチノサイトの角化の過程で作られる脂質で、その成分は下の表のようにスフィンゴ脂質の仲間セラミド類が半分を占め遊離脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステルなど複数の脂質で組成されています。

*細胞間脂質の成分
セラミド類 約54%
遊離脂肪酸 約21%
コレステロール 約16%
コレステロールエステル 約8%

このうち半数を占めるセラミドは6つのタイプがあります。
タイプ2のセラミドで水分を保持する役割を担っています。
タイプ1のセラミドは、角質層の特徴の1つバリアとしての働きをしていると考えられています。
タイプ1のセラミドには、必須脂肪酸のリノール酸が含まれていて、このリノール酸がバリアとして働いています。
リノール酸が不足するとバリアの働きが低下し、保持している水分量も減ってしまい、肌はかさつき荒れてしまいます。また肌も敏感になり炎症を起こしやすくなります。
リノール酸は体内で作ることが出来ません、そのため食事でリノール酸を摂るしかありません。
細胞間脂質の主要成分セラミドは、基底細胞のケラチノサイトのスフィンゴシンが素となっています。基底層から有棘層、顆粒層、角質層までの角化の過程でスフィンゴシンは代謝を繰り返し、角質層でセラミドとなります。これをセラミド代謝と言います。
アトピー性皮膚炎は、このセラミド代謝が正常に機能していないことが解っています。そして角質層のバリア機能が低下することが、アトピー性皮膚炎発症の重要な因子となっていることも解っています。

4-4. 皮脂膜

皮脂腺

皮脂を分泌する皮脂腺と呼ばれる分泌腺は右の図のように、毛が生えている毛胞の途中に房の形をしてあります。
皮脂腺は、その周りを基底膜で覆い、近接して基底細胞があります。この基底細胞が分裂することで皮脂腺細胞が作られ、皮脂腺の内側は皮脂腺細胞で埋め尽くされています。
基底細胞が分裂した皮脂腺細胞は、毛胞の内側に向かって移動しながら脂質を合成し細胞内に蓄えます。毛胞内の表面に達した皮脂腺細胞は、蓄えた脂質を毛胞内に放出します。
この皮脂腺から分泌された皮脂は、毛胞内を通って毛口から皮膚の表面に分泌されます。皮膚表面で角質細胞由来の脂質と混じることで、皮表脂質になります。この混ざり合った皮表脂質を皮脂と呼びます。
更に皮脂は、汗と混じり合い肌の表面で「皮脂膜」を構成します。

*皮脂膜とそれらを構成する成分
皮脂膜
皮表脂質 細胞間脂質
ジグリセライド スクアレン トリグリセライド モノグリセライド 遊離脂肪酸 コレステロール コレステロールエステル セラミド

皮脂膜の役目は、皮膚を保護することですが、肌をなめらかにする役割もあります。
皮脂膜は含まれる脂肪酸によって弱酸性になっていて、アルカリを中和する働きがあります。皮膚表面を弱酸性に保つことで、菌類が繁殖しないようになっています。
皮脂の量と経皮水分蒸散量(TEWL)の量は、逆相関関係にあるために皮脂の量が多すぎても少なすぎてもいけません。
皮脂は、水分の発散を防ぐ役割も担っています。また、皮膚の摩擦抵抗を減らし、表面をなめらかにしています。
皮脂の分泌が少ないと、肌にザラつきやカサつきが出て、バリアも弱まります。反対に皮脂の分泌が多いと、肌が脂っぽくベタつき、皮脂が刺激物質に変化し肌の炎症を招いたり、ニキビの要因にもなります。
このように皮脂膜が重要な機能を果たすためには、適度な皮脂の分泌が必要です。